11月、小林さんのお宅で美味しいパスタとワインを頂きながら、お話を伺いました。
聞き手はスタイリストの下田眞知子さんと私です。
小林さんと初めてお会いしたのは8年前。
今回お話を伺って、ちょっとした一言が監督に似ているなと感じました。

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『はじめて会ったのは、若い頃。キャップにいた頃。
 市川さんが企画・演出部にいた頃。ワゴン車を、よくぶつけてらしい。
 
 一緒に乗っていて事故にあったこと。
 買ったばっかりのBMW、市川さんが運転して、僕は下を向いていてカバンの中を調べ物しながら、
 突然ドーンっつって、僕の頭がフロントガラスにぶつかりました。(笑)
 
 それで市川さんが黙ってて、僕のほうから「大丈夫ですか?」って言った覚えがある。
 市川さん、何も言わないから(笑)
 そしたら市川さんが「大丈夫じゃない」って、逆だろうって(笑)

 それで世田谷通りだったので、脇に寄せて相手に挨拶して名刺渡したら
 「監督の市川さんですか?」って、知ってたみたいで。
 一緒の打ち合わせだったから、東宝の帰りで、「頭痛いなー」と思いながら打ち合わせにいった。

 ずーっと最後まで市川さんは僕に「大丈夫ですか?」って言わなかった(笑)
 
 (特に大怪我ではなかったの?)
 
「うーん、今になって出てくるかも。あの時のって(笑)」』


『はじめて一緒にした仕事。
 CMはやっていたけど、長いのは村上里佳子の「kiss off」
 (あれ、まだ見ていないんです。すみません。)
 初期のは市川さんも見てほしくないんじゃないの?
 (漂流記はみたんだけど)
 ここにいる下田さんがやってましたけどね。

 ===しばらく下田さんの話===

 (小林さん、kissoffのときはいくつ?)
 25年以上前かもね?
 (そこからずっと付き合いがあるわけよね?)
 ええ、そうですね(笑)
 (不思議な人ですよね、準ちゃん(笑))
 謎ですね・・・・ 』


『市川さんねジャンキーなのすきでしょ?
 ラーメンとか焼きそばとか、あれぺヤングとか
 けっこうね、ほら、市川さん塩っ辛いのすきでしょ?』
 


『(小林さんはどれくらい仕事したんですか?CMとか)

 CMは忘れたけど、半分以上は撮ってた。
 kiss off。BUSU,、佳代さん、病院、東京兄弟、東京や曲、大阪、トキワ、仰げば、
 たどん、マリーゴールド、バーニーズ
 半分か?

 (どの現場が一番つらかった?)

 みんな!!(笑)

 (即答じゃないの)

 冗談だよ(笑)
 みんな印象深い。いや冗談』


『ぼくが一番好きなのはね、これがってんじゃないよ、一番すきなタイプの映画は「たどんとちくわ」
 (たどんとちくわはあたしもすき)
 下田 あたしもすき
 あ、竜馬もあった

 たどんとちくわが好きなんじゃないよ、「たどんとちくわ」みたいな映画がぼくはすきなんだ
 あとはね誰かが「これ映画じゃない」っていってたね。
 病院ですね。「病院で死ぬということ
 あれがけっこう好きですね。』


『もっと色々やりたかったみたいだけどね
 もっと実験とか、いろいろやりたかったみたいだね。

 あれはね、ずっと若いうちからBU・SUのあとかな
 織田作之助の「六白金星」

 (それは台本ありましたよね)
 ああ、ありました

 あれと「青春のパラドックス」を一緒にあわせたようなやつなんだけど
 それはけっこうBUSUのあとすぐそれを撮りたいと本も書いてもらった
 けっこうやりたかった
 ただ時代が
 やろうとしたときはちょっと時代があんまり時代がよくなかった
 あれはやるとしたらおもしろかったんじゃないかと思います

 まぁ大阪でやるか東京でやるかわかんないけど

 ただ下駄のアップを撮りたかったの
 歩いている下駄を撮りたかったの
 六白金星の主人公が下駄を履いてるんですよ
 将棋の駒の形をした』


『あといろいろ オリジナルとかいろいろありましたよ
 こういうのはどうか?とかそういうの
 本にはならないけど
 二人でいろいろ話しましたよ

 京都で全然まったりしてなかなか進まない離婚調停の男と女の話とか(笑)
 (そういうの2人で盛り上がって話してた?)
 京都弁でね
 なかなか進まないのがおもしろくて、のらりくらりと離婚調停している男女の
 (映画で?)
 そう、映画に
 あとね江ノ島とか閉ざされた島みたいなとこで
 あのね、あの、ど忘れしちゃった
 ウィレム・デフォーが出てるあの映画
 暴走族・暴走族じゃないんだけどアナざータイム・アナザープレイスって
 いつかどこかでじゃなくて STREET OF FIRE
 ウエストサイドストーリーをもじったような映画。
 オペラみたいな、オペラじゃなくてミュージカル
 ミュージカルが撮りたいって
 (それ聞いたことあるな  やりたいことがいっぱいあったんですね)
 そうね
 市川と小林でミュージカル撮ったら
 やっぱり、あぁダメかーって(大笑い)
 (どんなことになるんだろうね?)
 (いちばん売れない映画になったんじゃない?)

 いちばんドンくさいミュージカルってどうかなって(大笑い)
 ふつうの話でミュージカルにしちゃう
 何にもない話なんだけど、ミュージカル仕立てにしたらおもしろいかなって』


『あとね、日本のね短編小説をいろいろ気に入ったやつをビデオ化しようか?とか
 で、売り出そうかとか悪ふざけたこと言ってましたよ

 ま、二人はね文学の話とか盛り上がる

 自然主義文学の「檸檬」とか梶井 基次郎
 田山 花袋(たやまかたい)の「蒲団」とか
 「キリギリス」とかさ「女学生」とか撮りたがってたよ 太宰の
 女学生って題名だけ先行っちゃって
 「市川、また変なこと考えてる」って誤解してるひとがいっぱいいるって』

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小林さん指導の下、お料理をしながらの3時間。
とても楽しいひと時でした。
今度はリクエストのあった「精進揚げ」を持って、またお訪ねしたいと思います。