ijoffice2010-08-02




「9月の“市川準・集”のこと」   

         

何年か前からか、市川の還暦には彼の個展をしたかった。
「 楽しみにしているから・・・ 」
答えてくれていた。


彼の新しい絵との出会いに心をときめかせていたが、
絵筆を握るのでなく毎日が映像を創る作業で埋められていった。


以前、外国に行った時、街の似顔絵描きに描いてもらったことがある。
躊躇する私に彼の「描いてもらえば、いいじゃない」に、押し切られ、
公衆の面前で覚悟もないまま「仏丁面のモデル」となっていた。
画家の背後に回った彼、つまり私の正面に立つ市川は
タバコを片手に、画家の肩越しにスケッチブックを覗き込み、
顎を引いてみたり、首を傾げたり、モデル(私)と絵とを比べ、
笑いを堪えていたと思うと、我慢できずに吹き出してしまったり、
スローテンポの百面相を見せてくれていた。


残された市川の「絵」は自画像を含め人物画が多い。
10代後半から20代前半に描いたものが大半を占める。
キャンバスの絵具の剥がれ落ちた部分に色を重ね、
補修していた後ろ姿が思い出される。


市川準・集」は市川の絵や映像の他に、
制作のお仲間たちに依る映像、音楽制作、作品展示、歌の公開、
可愛いお菓子までもが飛び込んだ賑やか手作り展示である。


「沢山の人が来て楽しんでくれるといいわね・・・市川さん!」
「(僕も)楽しみにしているから 」きっと言っている。




                       市川 幸子