ijoffice2009-02-06

《凡例》公開日・上映時間・製作・配給・賞歴他

『BU・SU』1987・10・31/95分/製作=東宝映画 アミューズ・シネマ・シティ 配給=東宝東和
第6回ファーイースト映画祭招待(‘04) 、キネマ旬報ベスト8位

〜麦子はあなただ〜 市川準監督デビュー作。性格が〝ブス〟な女の子が、上京して様々な経験を重ねる中で自分の殻を打ち破って成長していく姿を描く。「映画を見て、とまどう人もいるんじゃないですか。暗いし、重いし、笑えないし(笑)。でも、やっぱり富田靖子の視線とか存在とか、そういうものがバーンと残っているような映画のほうが映画として正しい。そこで僕が面白CM作家然としてね、なにか変なものを注入していったりする必要は何もないんじゃないですか」(キネマ旬報87年11月上旬号掲載インタビューより)



『会社物語』1988・11・26/99分/製作=松竹、日本テレビ、SEDIC、坂本事務所 配給=松竹


〜それでは、皆さん さようなら〜 人生80年。サラリーマンにとって、その半分を過ごさなければならない「会社」。そして会社に勤める者なら誰もが迎える「定年」。その定年をまじかに控えたサラリーマンの心のディテールを見事に描いた作品。「みんなが会社員であるような、この国の人々の胸の中で、いつもポッカリと口をあけている空洞に眼を注ぎつづけること。本当のことを言えない人々の、言葉を飲んでしまった表情の、雄弁さに、注意を注ぎつづけること。夕方の電車の中で、オーバーの襟に顔をうずめて、貝のように眠っている定年まぢかのサラリーマンの味方でありつづけること。彼らの心に、いつも孤独な者の味方である映画の心を、プレゼントすること。クレージーキャッツの、ハートを、プレゼントすること。『会社物語』で僕が考えたことは、以上のようなことです」(プレスシートより)



ノーライフキング1989・12・16/106分/
製作=ニュー・センチュリー・プロデューサーズ、新潮社、サントリー 配給=アルゴ・プロジェクト
第28回ニューヨーク映画祭招待(‘91)

〜リアル デスカ?〜 テレビゲームにのめり込んでいく子供たちを描いた いとうせいこうの同名小説を映像化したモダンホラー。「人間の存在感が希薄になってきている時代でしょう。何となく不安で、何もかもリアルじゃない。でも、とにかくこの現実を生きていくしかない、がんばらざるを得ない、そういう事をまこと(高山良)を通して言いたかったんです」(プレスシートより)



『つぐみ』1990・10・20/105分/
製作=富士松竹、全国FM放送協議会、山田洋行ライトヴィジョン 特別協力=FM東京 配給=松竹
毎日映画コンクール監督賞、報知映画賞監督賞、キネマ旬報ベスト9位

〜あの夏は、胸のあたりで覚えている〜 吉本ばななの同名ベストセラー小説を、牧瀬里穂主演で映画化。「いつ消えてしまうかわからない、かけがえのないものがあって、それが発する、強い「生命力」というものがあるような気がした。いろんな不可能にいらだち、いろんなことに命がけであるような女の子のきらめきと、そのきらめきに心を動かされるものたちの、視線が描けたら、と思った」(プレスシートより)



『ご挨拶』1991・11・23/30分/
製作=ソニーミュージックエンタテインメント、センタープロモーション 配給=東映アストロ

〜佳代さん、おめでとう〜 日常で交わされる挨拶をテーマに、現代に生きる人間の本質と本音を描いた3本立てオムニバスの中の第二話。「僕は出店に座っている女の人が好きで。無意識な群衆が通る脇で、あまり意志のない目で風景を見ているような女の人の姿が割に好きなのかもしれない」(キネマ旬報95年1月下旬号掲載インタビューより)



病院で死ぬということ1993・7・24/100分/
製作=中高年雇用福祉事業団、オプトコミュニケーションズ、スペースムー、テレビ東京 
製作協力=主婦の友社 制作=近代映画協会 配給=オプトコミュニケーションズ
毎日映画コンクール監督賞、日本映画批評家大賞作品賞、文化庁優秀映画作品賞(長編部門)、第18回エーテボリ映画祭招待(‘95)、オルレアン映画祭日本映画ビエンナーレグランプリ(‘95)、第6回ファーイースト映画祭招待(’04)、キネマ旬報ベスト3位

〜人生のいちばん大切な日〜 現役の医師・山崎章郎の同名ベストセラーを映画化。ガンの告知を受けた入院患者とその家族の闘病と、ターミナルケア(末期医療)に取り組む医師や看護婦の姿をドキュメンタリータッチで描いた異色ドラマ。ターミナルケアに取り組む岡山医師の許で治療を受ける4人のガン患者とその家族たちそれぞれの迫りくる死へ対峙する姿を描く。「死を描きながらも、生きていたことが、素晴らしかったという視点、死が欠落感とか喪失感ではなくて、死によって、生きてきた充実感を感じる視点を持ちたいと思った」(パンフレットより)



『欽ちゃんのシネマジャック「きっと、来るさ」』1993・10・8/15分/ 
製作:ニュー・センチュリー・プロデューサーズ

〜きっと、くるさ〜 子供たちが自ら手作りの芝居を計画した。舞台を作り、演出をし、ビラを配った。開演当日、子供たちは客が来るのを待つ。一本15分の短編の五本立てで一本につき三百円の入場料を自己申告制で見るというユニークなシステムによるオムニバス作品集。萩本欽一が発案し製作総指揮を務めたもので本作は神戸で公開された。



『クレープ』1993・10・9/56分/製作=西友東映東北新社 配給=東映

〜なんか、ロマンチックだね〜 別れた娘に14年ぶりに会う男。父として何もしてやれなかった後ろめたさを感じながらも、彼は高校生になった娘の姿に思いを馳せる。失いかけていたときめきが、男の胸に蘇る…。



『東京兄妹』1995・1・14/92分/
製作=ライトヴィジョン 配給=ギャガ・コミュニケーションズ=ライトヴィジョン共同配給
第45回ベルリン国際映画祭国際批評家連盟賞、第46回芸術選奨文部大臣賞、文化庁優秀映画作品賞(長編部門)、キネマ旬報ベスト2位
〜ふたりの時間は、永遠であるかのように思えた〜 記憶の中にある失われた故郷「東京」に捧ぐ、名匠・小津安二郎へのオマージュが漂う感動の作品。「小津作品へのオマージュと書かれたりして(笑)、自分で言ったわけじゃないけど。ただ笠智衆原節子に代表されるような、ああいう古い家屋の中の二人。別れ難くてもそれで別れなくちゃならないようなああいう肉親関係と、人の見つめ方。そういう精神みたいなものなんだと思うんですようね。(小津さんの影響が)もしあるとしたら」(キネマ旬報95年1月下旬号掲載インタビューより)



トキワ荘の青春1996・3・23/110分/
製作・配給=カルチュア・パブリッシャーズ製作協力=オプトコミュニケーションズ、近代映画協会
ロッテルダム国際映画祭招待、キネマ旬報ベスト7位

〜まじめだけど、ヘンだった。こっけいだけど、真剣だった。かなしい時も、あたたかだった〜 映画になった漫画家たちの青春。昭和30年代、漫画の神様、手塚治虫が住み、彼に憧れ明日を夢見る若い漫画家、石森章太郎赤塚不二夫藤子不二雄らが青春時代を過ごした実在のアパート〝トキワ荘〟。いまや伝説となったトキワ荘を舞台に、のちに漫画界の重鎮的存在になる彼らの、漫画にすべての情熱を注いだ若き青春時代を描く。「そこの前を通る度に、なにか懐かしさでほっとしてしまうような古い木造モルタルアパートが近所にあったのですが、2年前のある日、出張から帰ると一瞬にして取り壊され消えていた。その瞬間、そこに暮らしていた慎ましい人々も一緒に消えてしまったようなとても寂しい気がしたんですね。アパートの映画を撮りたい、と思ったのはその時でした。そして「トキワ荘」を僕なりに再発見したわけです。そして調べれば調べるほど僕向きの題材だと思えてきました。あまりにも自分の好きな世界だったんで気合いが入りすぎたくらいですが、そういう気合いが、色んなツキをよんで、実現した映画のような気がしています」(パンフレットより)



『東京夜曲』1997・6・21/87分/製作=衛星劇場近代映画協会 配給=松竹=松竹富士
第21回モントリオール世界映画祭最優秀監督賞、文化庁優秀映画作品賞、第12回高崎映画祭監督賞、キネマ旬報ベスト4位

〜ねえ、お茶漬け食べていかない〜 数年前に父母と妻子を残して家を飛び出した男が帰ってき。妻はなじることもなく、優しく迎え入れた。だが、男の帰還は男の妻に密かに想いを寄せていた青年の慕情を募らせ、かつて恋人だった喫茶店の女主人の心を揺り動かす…。四者四様の切ない想いが商店街の人々の人間模様と穏やかな心を揺り動かしていく...。「人は、いつのまにか様々なことを体験して、いつのまにか大人になっていて、いつのまにかしがらみをたくさんひきずって生きている。ある「町」の時の流れが、うっすらと塵が積もるように、人をだめにしてしまう過程を、描きたい、と思っていた。そして、そういう不毛な時間と闘うような、なにくそっというかんじの「大人の恋愛映画」を撮ってみたい、と思っていた。くすんだ町の話なのに、どこか熱に浮かされたようなところのある映画に、なっていればいいと思う」(プレスシートより)



『たどんとちくわ』1998・12・5/102分/
製作=ギャガ・ピクチャーズ 配給=ギャガ・コミュニケーションズ
第6回ファーイースト映画祭招待(‘04)

〜キレてるのは、若いやつだけじゃねえ〜 椎名誠の原作を基に演出、ストーリーの全てに新機軸を打ち出した、ブラックでシュールなバイオレンス作品。「『東京夜曲』みたいな撮り方をしていくと、自分で自分の世界を模倣しているような気になって、自分を一度突き放してみたかった」(キネマ旬報98年12月下旬号掲載インタビューより)



大阪物語1999・3・27/120分/
製作=吉本興業関西テレビ放送電通近代映画協会エス・エス・エム
配給=東京テアトル=「大阪物語」製作委員会
釜山国際映画祭招待、キネマ旬報ベスト8位

〜14才。ごっつしんどい夏でした〜 大阪を舞台に描いた売れない漫才夫婦とその娘の物語。8代目三井のリハウスガールに選ばれた池脇千鶴が、主役の少女を演じた映画デビュー作。「『大阪物語』は自分がいつも忘れたことのなかった映画たちのエッセンスが、はちきれそうにつまっている映画です。「想い」ということばは、とてもあいまいなことばですが、こんなに幾重にも、自分の「想い」がこもってしまった映画は、ありませんでした。この熱い「想い」が、人の心に届かないはずはない。と、思いたいです」(パンフレットより)



ざわざわ下北沢2000・7・7/105分/製作=パグポイント 企画=シネマ・下北沢市川準事務所 配給=シネマ・下北沢
日本映画批評家大賞作品賞、ペサロ映画祭招待

〜カクレ・シモキタン?〜 オール下北沢ロケで描いた、下北沢に住む人々の人間ドラマ。古いものと新しい物が入り混じって、老若男女、いろんな人々が狭い街で、肩を触れ合いながら過ごしている下北沢。不思議な存在感があるこの街、下北沢をライブ感あふれる映像で、生きている人々をまんなかに据えてスケッチブックのような人間模様を描いている。「お芝居が好きで、よく観に来ていたし、劇団の打ち上げで飲んだりはしてたんだけど、下北沢を描くことが、なんかとても恥ずかしいなあと。この恥ずかしさを消すにはどうしたらいいんだろうって、かなり悩んだ。そして、ある日、とにかく下北沢であれ、札幌であれ、博多であれ、どの街でも自分の作りたいものを作ればいいんだって思ったのね。舞台なんて関係ないって思って。そこから何かが自分の中で動き出したと思う」(パンフレットより)
http://www.watch.impress.co.jp/movie/old/contents/zawazawa/



東京マリーゴールド2001・5・12/97分/
製作=東京マリーゴールド製作委員会、電通テンカラット、オメガプロジェクト、シィー・スタイル 配給=オメガ・エンタテインメント
第6回ファーイースト映画祭招待(‘04)

〜最近、ダメなオトコとつき合っていませんか〜 林真理子の短編小説「一年ののち」を基に描いた、一年限りの恋物語。エリカに田中麗奈、タムラに小澤征悦、味の素のCMで田中と息の合った母娘を演じた樹木希林が母親に扮している。「今回の作品で撮影した東京は、いままでと違ったものかもしれない。今回、まだまだ撮り残している(東京の)アングルや場所があると実感しました。新しいものと古いものが奇妙に混在したり融和していて、とにかく面白い。極端にいえば、死ぬまで撮り尽くせないと思いましたね」(キネマ旬報01年5月上旬号掲載インタビューより)



竜馬の妻とその夫と愛人2002・9・14/115分/製作=東宝映画 配給=東宝 東宝博報堂提携作品
第7回釜山国際映画祭招待、第5回台北映画祭オープニング上映(‘03)

〜しょーがないじゃん、好きなんだから〜 三谷幸喜が2000年に書き下ろした舞台劇を映画化。竜馬暗殺から13年後の横須賀を舞台に、亡き竜馬をめぐって4人の男女が繰り広げる一大騒動を描いた笑えるラブストーリー。「僕は前からいろんな人に言われていたんですが、CMを作るとあんな面白いものを作るのに、なぜ映画になると真面目なものを作ってしまうんだ、と。そしてプロデューサーから笑わせるものを真剣に映画でやってみませんかと声をかけてもらったんです。その時、ふっと頭をよぎったのが、三谷さんがお書きになったこの舞台だったんです」(パンフレット市川準×三谷幸喜対談より)



トニー滝谷2005・1・29/75分/
製作=WILCO 配給=東京テアトル 配給協力=スローラーナー 協力=ジェネオン・エンタテインメント、セルロイドドリームス
第57回ロカルノ国際映画祭審査員特別賞、国際批評家連盟賞、ヤング審査員賞(‘04)、サンダンス映画祭ノミネート、ラス・パルマス国際映画祭審査員特別賞、第20回高崎映画祭グランプリ(‘06)

〜あなたを、いまでも愛しい〜 村上春樹の短編集『レキシントンの幽霊』に収められた同名小説を映画化した、イッセー尾形宮沢りえ主演の切ない愛の物語。「僕たちが日常生活している世の中を眺めてみると、あの衣裳部屋に近いんじゃないかと思うんです。多くの物、しかも一生かかっても買えない量の物、叶わない物に包囲されて、それがみんな「あなたにぴったりですよ」「あなたにぴったりですよ」と言い続けているわけじゃないですか。その時の、孤独感、ひとりぼっち感みたいなもの、それが今を生きている人の心であるような気がするんですね」(パンフレットより)
http://www.tonytakitani.com/



あおげば尊し2006・1・21/82分/製作=AZOTH 配給=スローラーナー

〜父は黙ったまま、私たちに最後の授業をする〜 直木賞作家・重松清の同名小説を映画化した、現代における〝死〟の問題を真摯に見つめたドラマ。「自分たちがよかれと思ってきた世の中作りも、本格的に見直さざるを得なくなっている。『あおげば尊し』という歌は、そういうある佳き時代というものを象徴していて、この映画は、それとちゃんとお別れしたい。ある時代に対する鎮魂みたいな声が歌から聴こえるようにした。それをクロージングで感じてほしいと思いました」(キネマ旬報06年1月下旬掲載インタビューより)
http://www.youtube.com/watch?v=JEVZoJhp2mk



あしたの私のつくり方2007・4・28/97分/
製作=日活、博報堂DYメディアパートナーズ、ソニーミュージックエンタテインメント、スカパー・ウェルシンク、講談社朝日新聞社テレビ朝日 
配給=日活
第2回フランスKINOTAYO映画祭グランプリ(‘07)

〜大人になった少女たちに、見てほしい物語があります〜 10代の少女たちが、本当の自分を求めて揺れ動くさまを瑞々しく切り取った真戸香の同名小説を映像化した思春期ストーリー。「自分が自分であることを引き受けろ、自分に負けるな、自分を見捨てちゃいけないということを伝えたかったんです。世界はもっと広いんだと気付いてもらえるような作品にしたいと思って作りました」(PHPカラット07年5月号掲載インタビューより)
http://watatsuku.goo.ne.jp/index_f.html



『buy a suit スーツを買う』2009・4・11/47分/
製作=市川準事務所 配給=市川準事務所+スローラーナー
第21回東京国際映画祭「日本映画・ある視点部門」作品賞

市川準監督初の自主映画。キャストをCMの仕事仲間で構成し、東京の焦燥感と空虚感の間を揺れながらも、そっと繋がって生きる人達を描いた作品。「かけがえのない日々、かけがえのない時間、そのかけがえのなさを描くことが、この時代へのかすかなメッセージであるような。効力のある郷愁を、定着できたら……」



『TOKYOレンダリング 詞集』2009・4・11/25分(『buy a suit スーツを買う』併映)
製作=市川準事務所 配給=市川準事務所+スローラーナー

「人がいる場所」「人と流れる時間」「人がはきだす詞(コトバ)」。その場所に立ち、その時間を感じ、そのコトバをのせて東京に浮かび上がる情緒を“レンダリング”した映像作品。
ー「出会わなければよかったなんて 言わないでくれ」ー2008年、春先の東京。市川準が日常における“人を観る時間”の中で切り取ったいくつもの風景。そこには市川イズムともいえるギリギリの「詞(コトバ)」が綴られている。“実験”といいながらも劇場のスクリーンで公開する事に拘り続けた市川監督がこの作品に込めたものはなんだったのか。25分の映像が過ぎ去ったあとの残像の中にそのこたえが生まれるかもしれない。